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【読書】恐怖の2時間18分(柳田 邦男)

今回は最近読んだ本「恐怖の2時間18分(柳田 邦男)」について、

レビューを試みよう。

恐怖の2時間18分 (文春文庫) | 柳田 邦男 |本 | 通販 | Amazon

 

作者について

栃木県出身で東京大学経済学部を卒業された作家さんである。

NHKで記者として報道に関わられたのち、

作家として主にノンフィクション作家としてご活躍されているようだ。

東大からのNHKという上級街道を捨てて作家とは素晴らしい。

 

本書の内容

本書は1973年にアメリカのスリーマイル島原子力発電所で起きた原発事故について、

その科学的な分析、および人為的な要因について考察された本である。

原子力発電所の図解や登場人物、発生した事象の時系列の説明など

とても細かく描写されている。

 

人は予期せぬ事象が発生した場合にどのように考え、行動するのかなど、

原発だけでなく仕事や日常生活に対してもの示唆的な内容となっている。

 

率直な感想

原発ってもっと高度な管理下に置かれてるものではないの?

こんな杜撰な管理をしていて果たして日本は大丈夫なのだろうか、、、

というのが率直な感想。

 

また、何かが発生する原因は一つではなく、細かい要因の積み重ねが

結果として大きな事象へと繋がっているわかりやすい例だなとも感じた。

 

そして、もし日本で再度原発事故が発生した場合、自分はどのように行動するのか

そもそも行動ができるのかと考えさせられた。

 

杜撰な管理

原発は核の力を利用して、核分裂の際に発生する熱で水蒸気を発生させ、

その力でタービンを回して電気を発生させる。

その核分裂の際に発生する放射性物質が人体に多大な悪影響を及ぼす。

 

以前、東海村臨界事故で被曝された方について書かれた本を読んだが、

病気やケガとは違い、本当に体が壊れていく、崩壊していくといった印象。

詳しくは以下をご参照ください。

東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録 | NHK取材班 |本 | 通販 | Amazon

 

そんな危険な物質を扱っているのだから、当然、高度で緻密な管理課のもとで

その道のエキスパートによって制御されている思いますよね?

でも実際は、簡単な教育を受けた技術者で、システムも不具合多発だったらしい。

 

システムの不具合はコスト削減に起因しているそうだが、

ついつい自分の仕事と重ねて納得してしまった。

ほんと人増やそうよって毎日思うし、システムなんて中身(ソースコード)を見ると

「よくこれで動いてるなぁ(汗」ということは非常に多いし。

 

技術者だってまともな教育を受けた人は稀で、大体の場合はいきなりプロジェクトに参画させられて、「現場で自分で学んで来い!」と送り出された人がほとんど。

目先の利益が得られれば後のことはお構いなしはどこの世界も共通ですね。

 

目に見える事象は小さな要因の積み重ね

事故は作業の際に発生した少量の水の混入と、それによって発生するトラブルを回避するための重要なバルブが閉じていたことが主たる要因。

 

ただ、それはあくまで直接的な原因で、そこに至るには様々要因の積み重ねがある。

 ・担当者の経験不足

 ・システム不具合

 ・UI(ユーザインタフェース)の不備

 ・事前の警告の無視

それらを無視して「安全・安心」を信じて進み続けた体質など、

日常的に色々な要因が積み重なり、それが結果として事故につながったに過ぎない。

 

確かに、日常でもそんなことは多い。

 

例えば、私は学生時代からバドミントンをやっていて、ダブルスを主体としている。

ダブルスでは暗黙のマナーとしてミスをしたらパートナーに一言誤るのだが、

基本的には最後にミスをした方の人が誤る。

 

ただ、私はラリー中に自分が一度も打たない場合でも失点したら誤るようにしている。

たまに不思議がられるが、自分としては本来関与すべき場面でできなかったり、

自分のポジションがおかしいことで2人のバランスが崩れるなど、

間接的に失点に関与したと考えている。

 

どうしても最後に失点、失敗したところに注目が集まるが、

それはどこかで生じた歪みがきっかけであることは忘れないようにしたい。

併せて、一人ひとりは自分の仕事を一生懸命行っているということも心に留めよう。

 

有事の際に行動できるか

スリーマイル島の事故では情報の共有もうまくいかなかったようだ。

 

事故発生後に放射能漏れはあり上空で計測した測定値は高かったが、

それが地上に到達するころにはかなり希薄され人体には影響のない範囲であった。

 

ところが、原子力の結構偉いグループが、上空の数値を地上の数値と誤認してしまい、

それがそのまま報道されてしまった。

それにより原発の周辺の住民は自主的に避難をはじめ、パニックが発生するに至った。

 

とあるカップルは報道を受けて、会社に書置きをして300㎞も逃げたそうな。

当初は書置きを見て同僚は笑ったが、事態が収まってからそのカップルの方が会社に戻ったころには、皆逃げて誰も出社していなかったらしい。

 

では、自分は果たして逃げる側になるのか笑う側になるのか、と考えると

周りに合わせて行動してしまうような気がする。

 

でも、原発事故やコロナもそうだが、これまで誰も経験していないことに対して、自分で考えて行動した人を笑うのはどうなんだろうか?

コロナのように未知のものに対する答えはだれも持っていないので、

各自の考えをもとに動くのは別に良いのではないか。

勿論、他者に迷惑をかけたり、考えを押し付ける、ルールを破るなどは論外だが、

そうでなければ自分の考えをしっかり持っているとも言える。

 

日本社会は学校教育のせいか、強固な同調圧力が存在するように感じる。

危機を回避するには、それに負けない意志の力を身につける必要がありそうだ。

 

最後に

本書においては、原発の仕組みなども詳細に説明されているが、

そのあたりを飛ばして読んだとしても、得られる教訓は多々あると思う。

 

特に、物事を一つの出来事してみるのではなく、些細な出来事の積み重ねであると

捉えることで、自分の一つひとつの行動を見直すきっかけにもなった。

 

古い本なのでAmazonでも中古しかなさそうですが、図書館などにも置いてあると思いますので、興味があればぜひ手に取ってみてください。